遺言の方式-1 自筆証書遺言

普通方式の遺言は、
 自筆証書遺言(民法第968条)
 公正証書遺言(民法第969条)
 秘密証書遺言(民法第970条)の3種類です。

ここでは、自筆証書、公正証書遺言について解説します。

秘密証書遺言は、自筆証書と公正証書の中間的な位置づけと考えられ、両方の長所ではなく欠点を受け継いでいると感じます。
従って、ほとんど使用されていないのが実態です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が一人で作ることができる、最も簡単な遺言書です。
原則として紙とペンさえあればいつでも作ることができますので、ほとんど費用はかかりません。
面倒な手続を行わなくても作れる、という点では、最も身近な遺言と言えます。

簡単に作れると言っても、一定のルールが必要です。

自筆証書遺言の作り方

遺言者が、遺言の全部を自分で書くこと

自筆証書遺言を作成するのに必要なのは、遺言を書くための紙とペンです。
現在の法律では、動画(ビデオなど)や音声(テープレコーダーなど)で遺言を遺すことは認められていません。
必ず自分の手で、遺言の内容を紙に書き残すことが必要です。

従って、体の衰えなどから自分で文字を書くことに支障がある方は、作成できないことになります。

日付を自分で記載すること

いくつかの遺言があった場合、後に作成された遺言の方が優先されます。
そこで、自筆証書遺言を作成する際には、必ず遺言を記入した日付を書く必要があります。
年月日を漏らさず書いてください。年号は西暦でも元号でもかまいません。

遺言者が、氏名を自分で書くこと

次に、遺言者が、自分の氏名を同じく遺言書の中に書き入れます。
ペンネームや通称、芸名などを記載しても良いとされていますが、あえてそんなものを使う必要はないでしょう。

遺言をされた方が押印すること

最後に、遺言者が遺言書に押印して、自筆証書遺言は完成となります。
押印するときの印鑑については特に指定はなく、実印、認印はもとより拇印で押印した遺言であっても有効として扱われます。

なお、作成した遺言は法定されていませんが、封筒に入れて封印し下図のとおり記載してください。
相続人が不用意に開封しないためです。

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自筆証書遺言のメリット

証人をたてる必要がなくいつでもどこでも1人で作成できる。

自筆証書遺言は、自筆で遺言を書くだけですので、証人に内容を確認してもらう必要がありません。

費用がかからない

自筆証書遺言は、紙とペンがあれば遺すことができます。
公正証書遺言のように、公証人に手数料を支払う必要はありませんので、費用をかけずに遺言を遺すことができます。

遺言の存在と内容を秘密にできる

自筆証書遺言は、遺言を確認する時まで、誰の目にも触れさせないでおくことが可能です。
ご自分の最期の意思を、確認する時まで秘密にしておきたいと思う方にとっては、自筆証書遺言かと思いますが、メリットはデメリットの裏返しです。

自筆証書遺言のデメリット

遺言書が発見されないおそれがある

遺言の内容と存在を秘密にしておける反面、遺言を残していることが分からなければ、せっかく遺しておいた遺言が見つからないリスクもあります。
また、存在を伝えていたとしても、その方が忘れていたり、覚えていてもそれを伝えられない状態にあれば、同じように遺言が見つからないこともあります。

自筆証書遺言の場合、せっかくの遺言が無駄になる可能性があります。

詐欺・脅迫の可能性・紛失・偽造・変造・隠匿などのおそれがある

自筆証書遺言は一人で作成し、簡単な方式で保存することができますので、遺言をされるときに脅されて書いたり、だまされて書いても、文面からはそのような事情がわかりません。
また、作成するときはなんの問題もなくても、遺言をした後で、偽造されたり変造されるおそれもあります。

このように、ご自分の最期の意思が、正しく伝わらない危険があります。

遺言が無効になるおそれがある

自筆証書遺言は、ご自分で書くので、どのような方式を取らなければならないか、何を書かなければならないかが分からないままに書いてしまう危険があります。
方式や記載の仕方の不備があると、遺言は無効になってしまいます。

また、例え方式や記載事項が正しくても、内容が不明確であったり、解釈の仕方に違いがあったりすると、相続人の間で意見が分かれてしまい、結局争いになってしまうことになります。

家庭裁判所の検認が必要

公証人が確認して作成する公正証書遺言と違い、自筆証書遺言は法律上有効に成立したかどうかの確認が出来ていません。

そこで、遺言をされた方が亡くなったあとに自筆証書遺言を確認する際には、遺言が有効なものかどうか、偽造されていないかなどを確認する事が必要になります。

これを「検認」といい、遺言を発見した方は家庭裁判所へ遺言を持って行き検認をしてもらう必要があります。

検認手続には、遺言者の生れてから亡くなるまでの戸籍を全て取得し、相続人が誰かを調査し、確定させる事が必要です。
相続人が亡くなっている場合は更にその相続人を調査しなければなりません。

経験上、戸籍の取得と言っても一つの役所だけで取得することは、先ず出来ません。
遠方であれば郵送による取得などで、時間と手間と費用がかなりかかると考えた方が良いと思います。
場合によっては、私たち士業に依頼することになります。

つまり、自筆証書遺言は遺言者が作成するときの費用はかからないのですが、結局相続人が負担するということになります。

自筆証書遺言チェックサービス

自筆証書で遺言を書かれている方は、一度専門家に観てもらった方が良いかと思います。
折角書かれた遺言書に不備があると、もったいないですよね。

当事務所では、自筆証書遺言の無料チェックサービスを行っています。
元々、初回相談は無料なのでその際に遺言書を持ってくだされば、チェックします。

どうかお気軽にご連絡ください。

次回は公正証書遺言についてお話しします。

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