相続‐3 寄与分
妻を亡くしたAさん、体が不自由になってからは、近くに住む長男B夫婦(特に長男の妻Dさん)
にずっと面倒を看てもらっていました。
一方の次男C夫婦は、父のことは気になりますが、遠方に住んでいるためなかなか面倒を看ることができません。
やがて、Aさんは亡くなります。
遺言はありません。
さて相続関係はどうなるでしょうか?
簡単ですよね、この場合は兄弟二人が2分の1ずつ相続することになります。(法定相続)
法の下の平等というわけです。
平等=公平ではない
しかし、平等=公平ではありません。
寄与分の考え方
そこで、「寄与分」という考え方が出てきます。
相続人のなかに,被相続人の財産(相続財産)を増やすこと(または,相続財産が減少するのを防ぐこと)に協力した相続人がいる場合を考えてみましょう。
相続が開始した時に,当該相続財産があるのは,見方を変えれば,上記のような相続財産の増殖に協力した相続人がいるからです。そのおかげで,他の相続人も恩恵をこうむることができるのです。
にもかかわらず,そのような貢献者も,何ら貢献をしていない人と平等な法定相続分しか受け取れないというのは,不公平です。
そこで,相続財産の増殖に寄与した相続人の相続分については,他の貢献していない相続人よりも優遇しようという制度が「寄与分(きよぶん)」という制度です。
民法第904条の2
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定によって算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする
例えば、・長男として被相続人である父の事業を手伝ってきた
・被相続人の事業に資金提供をした
・被相続人の娘が仕事をやめて入院中の付き添いをした などが該当します。
特別の寄与が必要
被相続人の療養看護 親に昼食と夕食を届けるほか日常的な世話を行っていた段階では、寄与分にはならないとされています。
家族としてこの程度の療養看護は当たり前とされているからです。
一方、認知症の症状が顕著に出るようになったため,子が親の3度の食事を取らせ常時見守りなどの対応をしていた場合は、
特別の寄与に当るとされています。
寄与分は、第一次的には共同相続人間の協議で定めるものとされますが、協議が調わないとき、又は協議する事が出来ないときは、家庭裁判所は寄与者の請求によって、寄与分を定めることになります。
寄与者はその際、特別な寄与の内容を証明する必要があります。
介護日誌や介護についての領収書などを記録しておくと良いと思います。
ただ、寄与分を認めてもらうためのハードルは少し高いように感じますね。
寄与分の算定方法
相続財産の価額を1200万円とします。
長男の寄与分の額が300万円と定められた場合
①遺産の額1200万円から寄与分の300万円を差し引きます。
1200万円-300万円=900万円(みなし相続財産)
②みなし相続財産900万円につき、法定相続分によって、各相続人の取得額を計算します。
③長男、次男ともに900万円÷2=450万円
④寄与者Bについては、450万円+300万円=750万円
結果、長男750万円、次男450万円となります。
寄与分を主張するよりは
さて、ここで再度事例を思い出してください。
お父さんの療養看護をしてきたのは長男夫婦、特にこの場合、長男さんの妻Dさんの負担は大きいと思います。
そして、よく考えると、Dさんそのものは相続人ではありません。
お父さんとしては、Dさんに感謝の意を示すため、何らかの対応が必要かと思います。
例えば、次のような事が考えられます。
①長男Bに法定相続分を上回る相続ができるように遺言書を書く
②法定相続人でないDに遺贈する遺言書を書く
③Dと養子縁組する
④Dが受取人の「生命保険」に加入する などです。
方法はいろいろありますが、①か②を公正証書遺言で書くことが一番と考えます。
附言で、Dさんに感謝の言葉を述べるともっとベストかとも。
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