普通方式遺言-2 公正証書遺言

そもそも公正証書遺言とは?

公正証書遺言とは、その名のとおり公正証書にて作成する遺言です。
公正証書遺言を知るには、まずは公証人や公正証書について知る必要があります。
公証人とは、公正証書の作成を専門とする人で、法務大臣が任命する国家公務員です。

公証人の作成した文書である公正証書は、訴訟をしなくても強制執行が可能になるという強力な効果を持っています。
また、法律専門家である公証人が作成した公正証書には、裁判においても確実な証拠になります。

このように確実な証拠になる公正証書で作成された遺言が、公正証書遺言です。

公正証書遺言の作り方

2人以上の証人が立ち会う

公正証書遺言を作る際には、遺言者と公証人の他に、証人が2人以上立ち会うことが必要です。
証人の主な役割は、
①遺言者の本人確認
②正常な精神状態で遺言を公証人に伝えたこと
③遺言証書の筆記の正確なこと等を証明することにあります。

遺言者や公証人に利害関係があっては正しく監視ができないことから、未成年者、推定相続人、受遺者やその配偶者、公証人の配偶者や4親等内の親族など関係のある方は証人となることができません。

遺言者が遺言の内容を公証人に伝える

遺言者は、遺言の趣旨を公証人に対して直接口頭で伝えなければなりません。(口述)
口頭で伝えるのであれば外国語でも構いませんし、手話や触読などの通訳によることもできます。

口述の内容を公証人が書面にするのですが、実際は遺言者とあらかじめ打ち合わせた内容を基に、前もって書面を作成する方法がとられています。

そして、書面にされた遺言は、遺言をされた方と証人に読んで聞かせて、遺言者が伝えたことと、書いてある遺言内容が食い違っていないかを確認します。

遺言者と証人とが、書いてある内容が正確であることを確認し、各自署名捺印する

遺言者が伝えた内容が、正確に書面にされていることを確認したら、遺言者と証人はその書面に署名捺印をします。
また、遺言者が目が見えない、手の震えのために署名できない場合は、公証人がその事由を付記して署名に代えることができます。

公証人が署名捺印をすること

以上の法律で定める手続に則って作成されたことが確認できたら、公証人は遺言が書かれた書面に署名捺印をします。
この公証人の署名捺印が済むと、公正証書遺言は完成することになります。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言には、以下のようなメリットがあります。

間違った内容は残さない

公証人という専門家が関与し、遺言者や証人に確認しますので、遺言を書き間違えたり、形式の整っていない遺言をするリスクが無くなります。

遺言内容の精査が可能

これも専門家が関与することの効果ですが、遺言を残す際には、誰にどの財産を与えるか,だけではなく、どのように手続をすすめるのかなどを話しあって決めることができます。このことで、実際に遺言内容を行う際にスムーズに行動することが可能になります。

偽造を防止する事ができる

公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。
公証役場では公証人の管理のもとで遺言書が保存されるため、遺言書がなくなったり、書き換えられたり、場合によっては破られたりする危険がありません。

検認が不要

公正証書遺言は、作成するときに厳しい手続を踏んだ上で、公証人が確認するものですので、実際に遺言内容を実行する際には、家庭裁判所で遺言書を検認する手続が不要になります。

相続が始まった際は、すぐに遺言を確認して手続を進められますので、相続人の費用や手間が減ります。

文面の検討が不要

自分が思っている内容を、実際に遺言として遺すことは実は簡単なことではありません。
言葉には様々な解釈があることから、曖昧な言葉や表現を使うと、遺言の内容が、自分の意思とは違う結果になってしまうこともあります。

公正証書遺言では、遺言の趣旨を伝えることで、その趣旨を公証人が文面にしてくれますので、自分の意思に沿った遺言内容を実現しやすくなります。

筆記が出来ない人でも遺言を遺すことができる

公正証書遺言は、公証人に口頭で伝え、これを公証人が筆記するかたちの遺言です。
高齢者の方の中には、病気や身体の衰えなどから筆記がままならない方もいます。
このように、ご自分での筆記が難しい方でも、公正証書遺言を使うことによって、遺言を遺すことが可能になります。

公正証書遺言のデメリット

公正証書遺言のデメリットは、公証人に支払う報酬などの費用がかかることです。
相続人の数や目的財産の価額に応じて異なります。 詳細は下記のとおりです。

①相続人、受遺者毎にその財産の価額を算出し、これを上記基準表にあてはめます。
②価額が算定出来ないときは500万円とみなして算定します。
③相続、遺贈額合計が1億円に満たないときは、11000円を加算します。(遺言加算)
④不動産は、固定資産評価額を基準に評価します。
 建物は固定資産評価額を宅地は評価額の1・4倍程度で評価します。

例1 相続財産が全て預貯金で、相続人Aが1200万円、Bが600万円、Cが400万円の場合(総額2200万円)
   A=23000円 B=17000円 C=11000円 計51000円+遺言加算11000円
   計62000円

例2 相続人Aが不動産のみ(宅地評価額1000万、建物300万円)Bが預貯金500万円の場合
   A=宅地1400万円(1000万円×1.4倍)建物300万円の1700万円=手数料23000円
   B=11000円  計44000円+遺言加算11000円  計55000円

自筆証書それとも公正証書

公正証書遺言を推奨

遺言を残す目的は、自身の意思表示の実現と争族回避にあります。

そのためには、確実な方法と争族にならない内容とすべきです。

【確実性】

公正証書遺言は、紛失、偽造・変造、隠匿、廃棄の可能性が皆無です。
また、公証役場で保管されます。

もし書いたのかどうかわからない場合でも、公証役場で検索することが可能です。(遺言検索)

遺言者の遺言能力を担保します。

公証人と証人2名の計3名の第三者が関与して作成するので、遺言者の遺言能力が問題になることがありません。

【争族にならない内容】

公証人(専門家)が作成するため、曖昧な内容にならず、まず紛争にはなりません。

公正証書遺言を推奨

上記の理由から当事務所は基本的に、「自筆証書」による遺言はお勧めしていません

紛争の可能性や手続きの煩雑さを考えると「公正証書遺言」でないとお客様のメリットとならないからです。

但し、「公正証書遺言」は公証役場との打ち合わせなどで少し時間を要するため、とりあえず自筆でという考え方はあると思います。

詳細は、お気軽にご相談ください。

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