自筆は楽だが、手続き大変!「自筆証書遺言の検認手続」
自筆は楽だが、、、
遺言書には普通方式によるものと、特別方式によるものがあります。
特別方式とは、ゆっくりと落ち着いた状態で作る普通方式遺言が不可能な場合に、 緊急に特別で作る遺言のことをいいます。
たとえば死亡が目前に迫っていたり、 船舶や飛行機が遭難した場合などに、緊急に行う遺言のことです。
従って、一般的に遺言といえば普通方式のことをいいます。
民法第967条(普通の方式による遺言の種類)
遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。
この中でも、秘密証書はほとんど利用されていないため、自筆証書か公正証書ということになります。
自筆と公正の比較は下表のとおりです。
今回は、「自筆は楽だが手続き面倒!=検認手続」そんなテーマで書いてみます。
あれは、たしか、、
2年ほど前に、遺言を残したいというご婦人がいました。
この方は既にご主人を亡くされており、お子さんはいませんでした。
ご兄弟が10人程いるらしいのですが、疎遠状態になっています。
少し前から体調を壊し、施設に入所していたのですが、療養看護を含め身の回りのお世話をしているのが、ご近所のご婦人でした。
彼女の意思は、この方に少しでも財産をあげたいというものでした。
そこで遺言書を作成することにしました。
もちろん「公正証書」をお勧めしました。
しかし、「役所が苦手だ、どうしても自筆で」と強く言われるので、自筆証書にしました。
その彼女がつい先日亡くなりました。
家庭裁判所での検認手続
ここからは裁判所の検認手続についてお話しします。
遺言書(公正証書による遺言を除く。)の保管者又はこれを発見した相続人は,
遺言者の死亡を知った後,遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して,その「検認」を請求しなければなりません。
また,封印のある遺言書は,家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。
検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,
遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして
遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
従って、検認手続がとられた遺言でも紛争になることがあります。
申立て人・申立てる裁判所
・遺言書の保管者
・遺言書を発見した相続人
申し立てる家庭裁判所は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所となります。
必要な資料
今回の件で、検認申立てに必要な資料は次のとおりと想定しています。
1.遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
2.相続人全員の戸籍謄本(兄弟が10人くらいいるとのことです)
3.遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
4.遺言者の直系尊属(今回の場合は祖父母)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
※今のところ多分必要無いと判断しています。
5.遺言者の兄弟姉妹に死亡している方がいらっしゃる場合,
その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
6.代襲者としてのおいめいに死亡している方がいらっしゃる場合,
そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
どうでしょうか?「自筆は楽だが手続き面倒!」ではありませんか?
ご兄弟が一人でも多く生存していること、
行方不明者などがいないこと、そんな事を考えます。
迅速な対応が売りですが、結構時間はかかりそうです!