~せめて遺言ありさえすれば~3
~せめて遺言ありさえすれば-その3~
相続に関する相談を受ける際、先ずお聞きすることは「遺言書」の有無です。
多くの方が残していないと言います。
それはそうです、あれば困って相談に来ることは少ないからです。
話を聞いた後、いつも思うこと、
「せめて遺言ありさえすれば」です。
遺言が無いばかりに困った事例紹介の3回目です。
お子様のいない方は遺言書が必要
「お子様のいない方は遺言書が必要です」と常々語りかけています。
お子様がいないケースは大きく次の2つのパターンが考えられます。
①婚姻している夫婦の間に子供がいない
②未婚の為に子供がいない
今回は②についてのお話しです。
生涯未婚の人が増加している
生涯未婚率(50歳時で一度も結婚していない人の割合)は年々増加しています。
下図は内閣府が発表しているものです。
これによると男性は4人に1人、女性は7人に1人が生涯未婚ということになります。
未婚率の増加は、少子高齢化社会の大きな要因の一つとなっています。
せめて遺言ありさえすれば
生涯未婚の女性が突然亡くなりました。65歳でした。
少し前から体調を壊し入退院を繰り返していました。
療養看護をしてきたのは近くに住む従妹さんです。
葬儀や亡くなった後の役所手続き、家財道具の片づけもこの従妹さんが行いました。
それらにかかった費用はこの従妹さんが負担しています。
亡くなった方の主な財産は預貯金と生命保険金です。
生命保険金の受取人はこの方のお父さんでしたが既に亡くなっています。
保険金の受取人の変更等はしていません。
当初依頼を受けた際、被相続人には既に亡くなっている兄がいるとのことでした。
この兄に子供がいれば上手く解決できそうだと思いましたが、戸籍をたどった結果、法定相続人の不存在を確認しました。
預貯金は凍結されています。
こうなったら、もう私の手の届く範囲ではありません。
家庭裁判所に相続財産管理人の申立てを行うことにしました。
個人が自分でやるのは大変です。
幸いこの従妹さんには知合いの弁護士がいるとの事なので、その方に依頼することになりました。
解決には少なくとも一年以上。
余計な手間と時間と費用がかかることになりました。
「せめて遺言さえあればなぁ」と思う瞬間です。
亡くなった方はこの世にはいませんが、残された者は大変です。
「まさか、こんなことになるとは思わなかった」と、空の上から思っているかもしれません。