せめて遺言ありさえすれば~2~
相続に関する相談を受ける際、先ずお聞きすることは「遺言書」の有無です。
多くの方が残していないと言います。
それはそうです、あれば困って相談に来ることは少ないからです。
話を聞いた後、いつも思うこと、
「せめて遺言ありさえすれば」です。
遺言が無いばかりに困った事例紹介の2回目です。
農業を営んできた父が突然亡くなりました。
妻は既に他界。
このご夫婦には二人のお子さんがいました。
長男と妹。
二人ともそれぞれ家庭を持ち独立しています。
もちろん農家を継ぐ意思はありません。
父は少し前に体調を壊し施設に入所、以後施設への訪問、身の回りの世話などは、主に妹がしてきました。
相続財産は、預貯金、農地を含む土地家屋、トラクターや自家用車等の動産です。
法定相続人は二人、ともに2分の1、不動産、動産を上手くお金に換えて分ければ問題はなさそうでした。
ところが、です。
兄が何を血迷ったか妹に「全部おれが相続するから相続放棄してくれ」と言いだしました。
このお宅は、元々古い家柄のようで後継ぎは長男、そんな古い慣習が根づいていたようです。
妹は当然反発します。
2分の1どころか、療養看護してきたこと、
生前に両親が兄の為にいろいろと資金援助をしてきたこと、
そんな余計?なことまで気になりだしました。
結局、二人の間で分割協議は調わず、家庭裁判所に行くことになりました。
結果はどうなるかは不明です。
分かっていることがあります。
この兄と妹の関係は多分元のさやには納まることはないということです。
「兄弟は他人のはじまり」
よくいわれる言葉ですが、まさにそのとおりだと思います。
二人が幼い頃、両親と4人家族で食卓を囲み、仲良く生活をしてきた時代がきっとあったはずです。
「それが」です。
この状況を、空の遠く彼方から父が見ているたら、どう思うのでしょうか?
「せめて遺言さえあれば」と思う瞬間です。
相続トラブルになった方がもれなく口にする言葉です。
「まさか、自分がこんなことになるとは思わなかった」と。