相続が発生したら
前回は、「相続について」というテーマで、相続の概要、法定相続人、相続選択の自由について記述しましたが、 今回は相続が発生したときの手続き等についてお話しします。
先ずお話ししておきたいのは、「出来るだけ速やかに行う」という事です。
亡くなった方の死亡届、葬儀、納骨、役所手続きなどのあわただしさは理解できます。
そして何よりも残されたご家族の悲しみ、心の整理もなかなかつかないと思います。
しかし、49日が終わったくらいから、手続きを進めた方がよいと思います。
今は相続人も高齢化しているので、相続手続きの途中で相続人が亡くなったりすると新たな相続が発生、
相続関係が益々複雑化するからです。
相続人の一人が認知症だったり、海外に住んでいたり、行方が分からないような場合は、長期化は避けられません。
長期化を防ぎ、スムーズな相続手続きを行う最大の方法は専門家に依頼することだと思います。餅は餅屋です。
期限があるもの
ちなみに、亡くなった後の手続きには期限が定められているものがあります。
死亡届 7日以内(戸籍法86条)
相続放棄または限定承認 3ヶ月以内(民法915条)
準確定申告 4ヶ月以内(所得税法124・125条)
所得税の申告納付 10ヶ月以内(相続税法27条)などです。
上記以外の手続き、遺産分割協議やその後の不動産の名義変更などについては特に期限がありませんが、前述のような理由から急いで行った方が懸命です。
昨年、母親が亡くなって一年経過したのだけれども姉が分割協議に応じてくれないというご相談がありました。
このケースは、最終的には紛争となったので、知合いの提携弁護士をご紹介しました。
調査した結局、母親の預貯金を姉が全て引出して使っていたようです。
そこで、取り戻すべく、いろいろと手続きを進めているようですが、一年経過していても未だに解決に到っていません。
早く話を進めていれば、ここまでは長期化しなかったことだと思います。
手続きの進め方
手続きの進め方については、次のとおりです。
遺言書の有無を確認
先ずは遺言書があるか無いかの確認をします。
自筆証書遺言だと、仏壇や書棚などに保管されている場合があります。
自筆証書遺言が見つかった場合は開封せずに、家庭裁判所へ検認手続の申請をします。
公正証書遺言であれば、遺言に基づき執行することになります。
なお、公正証書遺言を作成したらしいが、見つからない場合は公証役場で確認するとよいでしょう。(遺言検索)
遺言どおりに執行する必要はない
公正証書遺言がある場合は、遺言に基づき執行と書きましたが、自筆であれ、公正証書であれ、
遺言書のとおりに執行する必要はありません。
相続人全員が合意すれば、自由に分けていいのです。
亡くなった方の意思よりも、生存している人の意思を優先させるということです。
遺言執行者
遺言執行者とは遺言の内容を実現する為に必要な行為や手続をする人のことです。
遺言執行者は相続人の代表者として、相続開始後に財産目録を作成したり、預貯金や不動産の手続など
遺言の執行に必要な一切の行為をする権限があります。
遺言をされる方は、遺言書の中で遺言執行者を定めておくことが一般的です。
遺言が無い場合
相続財産の調査
亡くなった人の財産がどこに、何があるかを調査します。
銀行口座・有価証券・貸金庫・生命保険・宝飾類・借金等です。
最終的に相続財産目録を作成します。
相続人の調査
亡くなった人の、生れてから亡くなるまでの戸籍を取得し、相続人を確定させます。
詳細は、戸籍をたどろうを確認してください。
遺産分割協議書に相続人全員の署名・捺印が必要なので、疎遠になっている相続人又は前妻(前夫)の子供などを含め、
もれのない調査が必要です。
遺産分割協議書の作成
作成した、財産目録・相続関係説明図を確認しながら、相続人全員で遺産分割協議をします。
これにより、「だれが」「どの財産を」「どれだけ」取得するのかを明確にします。
また、現在判明していない相続財産が分割後に発見された場合についての記述もした方がよいでしょう。
協議成立後すみやかに遺産分割協議書を作成し、署名押印をします。
事後の手続き
遺産分割協議書を基に、銀行預貯金解約手続き、不動産名義変更、自動車の名義変更などを行い、遺産分割協議は完了となります。 遺言が無い場合の手続きには結構、手間と時間がかかります。
先ずは、専門家(当事務所)にご相談ください。